国内MESEコンテスト

2006年度 ジュニア・アチーブメントMESE選手権 「知の甲子園」研修旅行

2007年8月16日(木)~8月22日(水)、優勝チーム「MSTEMLA」の広島学院高等学校2年大里 晃示さん、武口 直樹さん、そして横山 秀樹先生、ジュニア・アチーブメントスタッフの4名でニューヨーク研修旅行に行ってまいりました。旅程は下記の通りです。

ニューヨークで働く日本人スタッフに、海外で働くことについて伺いました

ニューヨークで働く日本人スタッフに、海外で働くことについて伺いました

シティバンクのニューヨーク本店にて

シティバンクのニューヨーク本店にて

旅程

日付 予定
8/16(木) 10:35 広島空港出発(全日空NH676便)
11:55 羽田空港到着、成田空港第一ターミナルへ移動
16:35 成田空港出発(コンチネンタル航空CO008便)
16:30 ニューヨークニューアーク空港到着
17:30 ホテルへチェックイン後ホテル近隣で夕食
21:00 滞在時の注意事項等の簡単なオリエンテーション後就寝
8/17(金) 9:00 朝食後、ホテル出発、アメリカ自然史博物館見学
13:00 市内でランチ
13:30 フェリーボートでクルーズ
17:30 市内で夕食
19:00 ロックフェラーセンターから夜景見学
22:30 ホテル帰着
8/18(土) 9:00 朝食後、ホテル出発、国連見学
12:30 メトロポリタン美術館見学(館内でランチ)
16:00 グランドゼロ訪問
18:00 市内で夕食
20:30 ホテル帰着
8/19(日) 10:00 朝食後、ホテル出発、ヤンキースタジアムへ
11:30 ヤンキースタジアムでランチ
13:10 デトロイトタイガース戦観戦
16:00 ヤンキースタジアム出発、市内で夕食
20:30 ホテル帰着 
8/20(月) 9:30 朝食後、ホテル出発、 シティバンク本社訪問、下記の通りミーティング
10:00 Mr. Ansh Roy, Co-chair for the Asian Pacific Employee Network
11:30 Ms. Pam Flaherty, President & CEO Citigroup Foundation
12:30 Mr. Kenji Nakao and other Japanese staff, Citibank
16:00 市内でショッピング
18:00 市内で夕食
20:30 ホテル帰着
8/21(火) 7:30 ホテル出発、空港で朝食
11:10 ニューアーク空港出発(CO009)
8/22(水) 13:55 成田国際空港到着、羽田空港へ移動
17:30 羽田空港出発(NH683)
18:50 広島空港到着、帰宅

参加者感想文

広島学院高等学校2年 大里晃示

文理選択に迷っていた高1の秋に、先輩からミースの話を聞いて軽い気持ちで参加したのですが、ピリオド(意思決定)を重ねていくうちに段々と引き込まれて行き、思いもかけない分野にも興味を持つことができました。

また、ニューヨーク研修旅行を終えて、普段では味わう事のできない多くの経験をさせていただく事ができ、これらの事は、自分の将来を考える上で大いに役立つであろうし、いままで思い描いていた将来に大きな影響を与えそうです。

ここからはニューヨークの話になりますが、ニューヨークでまず感じたのは、スケールのでかさです。ビルの高さも、人の多さも、人の体格も、食べ物の量も、何もかも想像を超えていて驚きました。また外見だけでなく、内面も千差万別で、多くの人種が暮らすニューヨークの光と影なのかなと思いました。

ニューヨーク滞在の中でもっとも楽しめたのは、たっての希望をかなえていただいた、ヤンキースの試合観戦です。僕等は2人とも野球部に所属していて、日本でも何度も球場に足を運んで試合観戦をしましたが、球場は日本よりもかなり広いものの、観客席がグラウンドに近いのでグラウンドがかなりせまく感じられ、選手達を間近で観られるので選手のプレーや試合の迫力は圧巻でした。また、松井選手の勇姿は同じ日本人として誇りに思えました。

その他にも、自然史博物館では歴史の奥行き、メトロポリタン美術館では芸術の素晴らしさ、国連やグランドゼロでは平和に過ごすことが出来る事のありがたさを痛感し、とてつもなくスケールの大きいアメリカを見ることができました。

そして、今回の大きな目的であるシティ・バンク本社訪問が滞在最終日にありました。世界を動かす銀行だけあって、巨大な本社社屋だけでなく、周りにはいくつもの関連社屋がありました。そこでは、最初に外国の人がアメリカで働きやすくするための部門の責任者である(Ansh Roy氏)とジュニア・アチーブメントをはじめとする、青少年の育成プログラムに資金援助をしてくださっている部門の責任者である(Pamela P. Flaherty氏)と面談をさせていただきました。が、ほとんど言葉が理解できず、自分の言いたい事も言葉にできず、自分の英語力のなさを痛感しました。そのあと、実際にアメリカのシティ・バンクで働く日本人の(中尾 憲二氏)とランチミーティングをさせていただき、アメリカで働く言葉の壁や文化の違いによる大変さや、アメリカの人からは日本人は几帳面であると評価を受けている点などの話を聞かせていただきました。ここでも異国で働く事の難しさを感じ、困難を乗り越えて異国で活躍する中尾氏や松井選手の努力にただただ尊敬するばかりでした。

今回の研修旅行で、自分が今まで知っているつもりでいた世界は、限られた情報の中のただ一つにしかすぎず、自分は広い世界のことをまだまだ何も知らないし、知りたいと思いました。また、そのためにまずはコミュニケーションをとるための英語を磨かなければならないと実感しました。多くの課題が見つかり、今までなんとなく過ごしていた中学からの4年間を反省し、まだまだ模索中ですが、将来に向かって努力して行きたいと思います。

この機会を与えてくださったシティグループのスタッフの方々、また黒木さんをはじめとするジュニア・アチーブメントのみなさん、本当にありがとうございました。そして、きっかけをくれた先輩に感謝!!

ヤンキースタジアムにて

ヤンキースタジアムにて

広島学院高等学校2年 武口直樹

ニューヨークに着いた夜は、食事(いきなり王道のハンバーガー。あまりの大きさに食べきれなかった。)をとってすぐに就寝し、明日以降に備えた。

次の日からは、本当にいろいろなところへ連れて行っていただいた。いくつもの巨大な恐竜の模型が圧倒的な存在感を示していたアメリカ自然史博物館や、あまり知識のない自分でも、単純に見てすごいなと思えるような絵画や彫刻ばかり展示してあるメトロポリタン美術館、テロによりビルがなくなり、今では工事現場と化してしまったグラウンドゼロなど印象的な場所ばかりだった。自分が野球をしていることもあり、無理を言ってヤンキースの試合にも連れて行っていただき、卓越した身体能力を生かしたメジャーリーガーたちのプレーを間近で見て刺激を受けた。個人的に最も感銘を受けた国連の見学では、実際の国連の会議で使われている会議場などを案内してもらい、世界中のあらゆる事柄がここで決まるのだと思うと、今自分はものすごい場所にいるんだなと感激した。中国人のガイドの方が英語で説明をしてくださり、聞き取れない箇所はいくつもあったけれど、何とか全て理解しようと必死で耳を澄ました。

あっという間に4日間が過ぎ、次の日にはニューヨークを発つのみとなった5日目に、シティバンクの本社を訪問した。最初に、シティバンクで働くアンシュさんと日本人の山岸さんという方たちと話をした。そこでは、アジア人が海外で働く場合、他の国の人間と比べてアジア人は極端に発言力に乏しいという話を聞いた。話す文化の中で育つ欧米の人間とは違い、日本人は静の文化、言葉にしなくても考えは伝わるというような文化の中で育つために、いざ欧米の人間と一緒に仕事をするとなると、会議などで会話に進んで参加することができない、その結果仕事に関して相手にされなくなってしまうということがあるそうだ。アンシュさんたちは、そういう今のアジア人を世界で仕事のできる人間、きちんと発言することのできる人間にするための活動をボランティアで行っていると聞いた。アメリカ人がものすごく話し好きな人種であるということはニューヨークに来てすぐ実感したことで、ガツガツとしゃべるアメリカ人に対して相当萎縮してしまっていた自分にとって、とても身にしみる話だった。

その後ビルを移動して、今回僕たちをニューヨークに招待してくださったCitigroup FoundationのCEO、Pamela P. Flaherty氏と話をした。そこでは「ニューヨークの印象はどうか」といったことや、「将来の進路は決まっているのか」といったことなどいくつか質問をされた。その質問に対して英語で答えたかったのだが、実際のところほとんどできなかった。言いたいことはあるんだけれど、それを英語で表現しようとするとものすごく単純な文章しか思いつかず、自分の本当に言いたいこととずれてしまう。それが嫌でつい日本語に頼ってしまった。英語は道具でしかないとよく言われるし、自分もそう考えていた。けれど、その時、その言葉は英語を話せる人間だけが口にできるものであるような気がした。英語を話せなければ、いくらすごいことを考えていても相手に伝えることができない。極端だろうが、英語を話せてやっとスタートラインに立てるのではないかとそのとき思った。英語を話すことのできない自分をもどかしく思い、ひどく悔しかった。

最後に昼食を兼ねて、シティバンクで働く日本人社員の中尾さん、佐藤さん、ヒロコさんたちと話をした。1時間ほど話をする中で、アメリカでは仕事は5時、遅くとも6時には切り上げ、それからは家族との時間をゆっくり楽しむものなのだということを聞いた。ヒロコさんは以前日本の銀行で働いていたそうで、アメリカへ来たばかりの頃に、仕事は5時には切り上げるということを知らずに、残った仕事を遅くまで片付けていたことがあったそうだ。日本では残業は当然のことだと考えられているところがあるが、そのときヒロコさんは上司の方に「どうして今仕事をしているんだ。早く帰って家族との時間を楽しみなさい。」と怒られたそうだ。いかにもアメリカらしい、人と人とのふれあいを大切にした考え方だなと思った。

これまで全く海外に縁のなかった自分にとって、ニューヨークは見るもの全てが新鮮で、また学んだことも随分と多かった。英語を実際に使ってみて初めて自分の英語がいかに未熟であるかということを痛感し、また日本とは異なる文化に触れることで、世界は広いんだなということも少しは感じられたんじゃないかと思う。今まで心のどこかで感じていた「外国こわいなぁ」という気持ちも、今回の研修旅行で完全に消え去った。何でも経験できることは経験するべきだなということも、ニューヨーク旅行を通して学んだことの1つだ。

このようなすばらしい経験をさせてくださった、シティバンクやジュニア・アチーブメントの方々、旅行中ずっとお世話になりっぱなしだった黒木さんに、心から感謝したい。

広島学院高等学校 教諭 横山秀樹

今回のニューヨーク・アワード旅行は、生徒そして私に貴重な体験をいくつも提供してくれた。それを、4つのキーワードで振り返ってみたい。

第一のキーワードは、「未知との遭遇」。生徒たちは、初めての海外、そして、私も海外へ行った経験が少ないため、見るもの、聞くものすべて新鮮で、驚きの連続であった。特に、人間や食べ物や建物のスケールの大きさには圧倒された。食事ごとに、その量に驚き、美術館・博物館を訪問するたびに、その広さ、展示品の多さに唖然とさせられた。生徒も私も、日本で、TV番組や情報誌などを通して、知っているはずのニューヨーク。しかし、実際に体験し、それを肌で感じ取った今回の旅は、まさに、「未だに知らなかった何物かに、出会った」という感覚を連続して得られるものであった。

第二のキーワードは、「人種のサラダボウル」。まず目につく、日本にはない光景-文化や風習が異なる人々が、同じ空間で生活しているという事実。ニューヨークが「人種のサラダボウル」と言われる由縁だが、今回の旅行で、これは、この都市独特のものではなく、企業にとっては普遍的なものになってきているという実感を覚えた。「知の甲子園」のスポンサーである、シティバンクを訪問した際、 Ansh Roy氏と会談した。彼は、シティバンクで、様々な人種の人同士が働きやすい環境づくりを行っている部署の責任者であった。彼の具体的な仕事は、文化の共有(例えば、日本の盆踊りや中国の旧正月を体験する)ことや、アメリカの企業で働くためのスキルを向上させる(例えば、自分の考えを明確に主張する力など)ことなどであった。これは、多人種多民族を受け入れているアメリカの企業ならではのことであろう。しかし、同時に、このような取組は日本企業が世界で生き残っていくためには必要とも感じた。経済・社会のグローバル化の進行は、猛烈なスピードで進んでいる。この波に乗るためには、日本企業が国際化していかなくてはならない。日本の労働環境も、このような状況になる日は近い、Ansh Roy氏との会談で、そう感じた。

第三のキーワードは、「教育再考」。シティバンクへの訪問では、他に、Citigroup FoundationのCEO、Pamela P. Flaherty氏や現地支店の邦人、中尾氏らと会談したが、教員の立場として、気がかりになる点があった。それは、生徒も私も、なかなか発言・質問ができなかったということだ。英語が流暢ではないとか、金融関係の知識が少ないという類の理由からではない。そういうことに慣れていなかったからだ。Ansh Roy氏も話しておられたが、アジア人は、概して、自分の意見や発言を自重する傾向にあるという。しかし、アメリカは、考えていることは、どんどん主張してゆく文化を持っている。果たして今のような教育環境(授業の中心は、講義形式)で、このような文化を持っている国々とビジネスを展開できる生徒が育てられるのか、教員として根本的な疑問が湧いた。グローバル化の流れに対応していくためには、教育方法を工夫せねば(具体的な方策は今後の課題だが)、そう痛感させられた。

そして、最後のキーワード、「Boys、be ambitious!」シティバンク現地支店の中尾氏との会談の中の言葉で象徴的な言葉がある。「失敗をどんどんしなさい…」中尾氏は、日本では、一度の過ちは命取りになる場合もあるが、アメリカでは、失敗は人生の糧、やり直して成功すればよい、という趣旨の話をしてくださった。さらには、自分のライフプランを立てて、若くして支店長になった人物の話を引き合いにだしながら、志を持って、どんどんチャレンジしていく精神の重要性を語ってくださった。今回旅行に参加した両名は、高校二年生。彼らの人生設計において、大いなる示唆を与えてくれたに違いない。

最後に、アワード旅行とはいえ、このような機会を与えてくださったシティグループの方々そしてジュニア・アチーブメント・ジャパンに、生徒とともに感謝をしたい。